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Q&A

Q41: インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎ってどんな人がなりやすいの?どんな治療をするの?

まず両者の違いを確認しておきましょう。

インプラント周囲粘膜炎は歯肉炎(歯肉に炎症を起こしているもの)、インプラント周囲炎は歯周炎(骨にまで炎症が及んでいるもの)のような状態のものです。

インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎になりやすい人の特徴として、

1.不良な口腔衛生
(プラークコントロール不良・清掃不良)

2.歯周病の既往

3.糖尿病

4.喫煙

5.咬合の過負荷

6.残留セメント

などがあげられます。

治療方法は、インプラント周囲粘膜炎については、非外科的治療によって炎症(BOP)を減らすことができ、さらに抗菌薬含嗽の付加的な使用が有効であることがわかっています。一方、インプラント周囲炎に対する外科的処置の一番の目的は、インプラント表面へアクセスし、汚染除去を行い、炎症病変を消失させることです。付加的な抗菌薬の全身投与がインプラント周囲炎を解決するという声もありますが、完全には立証されていません。また、再生療法が治療結果に有益な効果をもたらすという研究報告はありません。

Lindhe J, et al. J Clin Periodontol 2008; 35(8 Suppl): 282-285.

※参考書籍
 「インプラントのための重要12キーワードベスト240論文」
 一般社団法人日本インプラント臨床研究会 編
 クインテッセンス出版株式会社

 「インプラント周囲炎とレーザー」
 一般社団法人 日本レーザー歯学会
 クインテッセンス出版株式会社

Q42: 歯周炎の既往がある人は、既往がない人に比べてインプラント治療の予後はあまりよくないのはなぜですか?

「歯周炎の既往歴がある患者に対してインプラント治療を行った場合、インプラントの生存率は非歯周炎患者に比べ低かった」という研究報告があります。

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

また、多くの研究で歯周炎はインプラント治療のリスク要因の1つになるのではないかという報告があります。文献的に明らかであるように、歯周病の既往歴がある人がインプラント治療を受ける場合、治療結果に大きなリスクがあるといえます。

これまで数多くの研究がなされてきましたが、研究結果に基づいたインプラント周囲炎の治療法は確立されておらず、インプラント周囲炎に罹患しないように予防することが一番大切です。

治療順序を間違えないようにし、まず残存歯の歯周治療を徹底的に実施し、できるだけ歯周病原細菌を駆除した後にインプラントの植立手術をすることが重要です。

また、治療終了後は定期的なメインテナンス(SPT)による炎症のコントロールを実施し、少しでもリスクファクターを減少させることも大切です。喫煙などの環境因子がインプラント周囲炎のリスクを増加させることも分かっていますので、環境因子の改善にも努めましょう。

 

「10年間のメインテナンス中に慢性歯周炎によって歯を失った患者のインプラントは、歯周炎以外の理由で歯を失った患者のインプラントよりも、生存率が低く生物学的な合併症率も高かった。歯周炎に罹患した天然歯と同様に、臨床的に炎症兆候を示すインプラント部の歯肉炎下細菌叢は、健全なインプラント周囲で認められるものとは大きく異なる。すなわち慢性歯周炎で認められる細菌叢と、インプラント周囲炎で認められる細菌叢は酷似している。」

Karoussis IK, et al: Long-term implant prognosis in patients with and without a history of chronic periodontitis: a 10 year prospective cohort study of the ITI Dental Implant System. Clin Oral Implants Res 14(3): 329-339, 2003.

 

「歯周病原細菌であるグラム陰性嫌気性桿菌がインプラント周囲炎と関連があり、歯周疾患の既往がインプラント周囲炎のリスクファクターとなる。」

Leonhardt A, et al: Microbial findings at failing implants. Clin Oral Implants Res 10: 339-345, 1999.

 

「欠損がなく歯周病の既往のない歯列と比較して、歯周病の既往のある患者の口腔内に埋入したインプラントでは、3~6ヵ月後にインプラント周囲溝から高い確率で嫌気性の歯周病原性と思われる細菌が検出された。」

Mombelli A, et al: The microbiota of osseointegrated implants in patients with a history of periodontal disease. J Clini Periodontol 22: 124, 1995.

 

「慢性歯周炎の既往のある患者と歯周組織が健全である患者の間にはインプラントの短期、長期の生存率に統計学的な有意差はないが、慢性歯周炎の既往のある患者は長期にわたりプロービング深さ、辺縁骨の喪失、インプラント周囲炎の発症率が有意に高い可能性がある。」

Karoussis IK, et al: A comprehensive and critical review of dental implant prognosis in periodontally compromised partially edentulous patients. Clin Oral Implants Res 18(6): 669-679, 2007.

 

「非常に粗い表面のインプラントを使用した場合、もしくはSPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)が行われなかった場合、歯周炎の既往歴がある患者群ではインプラントの喪失数がほぼ3倍になっていた。しかし、リスクファクター(喫煙、口腔衛生、糖尿病など)の評価がなされていないため、決定的な結論を出すことはできない。」

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

「侵襲性歯周炎の既往歴がある患者(再生骨にインプラント埋入)10名と歯周状態が健全な患者10名とで比較をしたところ、3年後の生存率は100%であったが、侵襲性歯周炎患者群ではインプラント辺縁の骨吸収が大きかった。」

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

「侵襲性歯周炎の既往歴のある患者へのインプラント治療は、より大きな骨吸収が起こる。」

Hänggi MP, et al: Crestal bone changes around titanium implants. Part I. A retrospective radiographic evaluation in humans Comparing Two Nonsubmerged Implant Designs With Different Machined Collar Length. Journal of periodontology 76: 129-140, 205.

 

「歯周病の既往のある患者へのインプラント失敗率はわずかに高い程度である。しかし、徹底したSPTを行っていくことで長期に機能しうる。臨床家は歯周炎とインプラント周囲炎の細菌叢が類似しているため、口腔内での歯周病原細菌の転移がインプラントの長期予後を危うくする可能性があることを考慮すべきである。」

Quirynen M, et al: Impact of supportive periodontal therapy and implant surface roughness on implant outcome in patients with a history of periodontitis. J Clin Periodontol 34(9): 805-815, 2007. Review.

 

※参考書籍
 「歯周病患者におけるインプラント治療の実践」
 特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会 編集  医学情報社

Q43: 大口式インプラント法とは?

インプラント治療とは、歯が無くなったとき、失われた部分に人工の歯根(インプラント)を植え込み、その上に修復物を装着して機能を回復させる治療法です。

従来のインプラント治療では、ドリルで骨を削って人口歯根を植え込んでいましたが、大口式インプラント法では骨表面にとても小さな穴を開け、その穴を少しずつ広げて人工歯根を入れます。 骨を削る作業が少ないため、歯科特有の不快な音や痛みも少なく、より快適に治療が受けられます。

大口式インプラント法のメリット~ドリル式と比較して~

大口式インプラント法のメリット

大口式インプラント法手順

大口式インプラント法手順 小さなバー(直径0.5ミリ程度)でインプラントの位置決めをします。麻酔をしているので痛くなく、小さなバーを使用して1秒程度の作業です。 次に細いリーマー(針灸治療の針のようなもの)で専用器具の通り道をつくります。手動ですから音も殆どありません。 次から専用器具(※オーギュメーター)を使用して穴を広げます。細い骨でも少しずつ広げて太くします。 太さを代えてだんだん穴を大きくします。 必要な穴の大きさになるまで器具を取り替えながら徐々に広げていきます。手作業で丁寧な作業を行います。 骨とインプラント体が結合したら歯が入ります。
※オーギュメーターは、鍼灸治療に用いるような極細の針で、(株)メディカルエイベックスの取り扱い商品名です。

大口式インプラント法手順

大口式インプラントは、すべての症例に適用されるわけではごさいませんので、ご了承下さい。詳しくは当院スタッフまでお気軽にご質問下さい。

Q44: インプラント周囲からの扁平上皮癌について教えてください。

口腔癌の原因の一つとして、慢性炎症が癌発生の温床となることが知られています。口腔癌のうち、扁平上皮癌は口腔悪性腫瘍の90%以上を占め、喫煙と飲酒の原因の75%にあたるとされています。口腔癌は口腔のどんな部位にも生じます。日本では舌が50%と多数を占め、ついで歯肉、頬粘膜、口底、口蓋と続きます。臨床的には、潰瘍や腫瘤を形成し、易出血性であり触診で周囲に硬結を触れるのが特徴です。CTによる骨吸収評価、MRIによる腫瘤の検出や進展評価が有効です。腫瘤の原発巣およびリンパ節転移の評価は造影CT、MRI検査が有効です。

 

治療方法

QOLも考慮した、三者併用療法(切除手術、放射線治療および化学療法の併用)による治療が、現在では主流です。リンパ節転移によって、予後が左右されます。口腔癌は容易にリンパ節転移を起こし、歯肉癌が下顎管へ浸潤すると5年生存率が25%以下に低下します。

 

※参考書籍

 「画像診断に学ぶ難易度別口腔インプラント治療」
 編集 金田 隆
 著者 阿部 伸一、金田 隆、矢島 安朝、加藤 仁夫、月岡 庸之
 永末書店

Q45: サイナスリフトとソケットリフトの違いは何ですか?

上顎の歯槽骨(歯が埋まっている部分の骨)が吸収するとその上顎洞と呼ばれる鼻の空気の通り道(空洞)の底までの間の骨の量が少なくなってしまいます。そのためインプラントを埋め込むことが困難になります。この場合、埋め込む骨の厚みを確保するために上顎洞を持ち上げる方法をとらなければなりません。
具体的には空洞の底(骨)の表面の粘膜を骨からはがして持ち上げることで空間を作り、そこに骨移植を併用するなどして骨を作るよう誘導します。
上顎洞の横の壁からのアプローチが「サイナスリフト」で、歯槽骨頂からアプローチするのが「ソケットリフト」です。
骨の厚みが極端に少ない場合はサイナスリフト法をとりますが侵襲が大きく体に負担をかけやすいという点があります。
ソケットリフト法が負担が少なく手術も比較的簡単なのですが、骨の厚みが多い場合のみ適応できます。

Q46: 歯が折れてぬかないといけないのですが、その後入れるものをブリッジかインプラントとで悩んでいます。前後の歯は問題ないと言われましたが、どうでしょうか?

1歯欠損の症例について

ブリッジの支台歯とインプラント補綴の隣在歯の経過を観察した報告

ブリッジの支台歯抜去 7.2%(12/166歯)
インプラント隣在歯抜去 2.0%(2/102歯)

ブリッジのほうが数倍リスクが高い。

清木祐介, 他.インプラント部が残存歯に与える影響 第3報 中間欠損部に埋入したインプラントの隣在歯とブリッジ支台歯の予後について(5年経過症例). In : 第37回日本口腔インプラント学会学術大会 抄録集, 2007 : 341.

ブリッジでは支台歯が負担を背負い、インプラントでは隣在歯の負担を軽減するというまったく正反対な補綴法であるために、上記の結果は至極当然といえます。

しかし、インプラントでは支持組織となる骨、そして対合歯の条件を考慮しなければなりません。

欠損の始まりであり咬合支持が十分にある1歯欠損においては、インプラント適用自体のリスクも小さい場合が多く、積極的に適用を推奨することができます。

※参考書籍
 『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
 編著  本多正明  宮地建夫  伊藤雄策  武田孝之
 クインテッセンス出版株式会社

Q47: 奥歯が2本ありません。今まで入れ歯を入れていましたが、バネをかけていた歯が動いてきたような気がします。インプラントにするべきか考えています。教えて下さい。

遊離端欠損の症例について

インプラントと義歯を観察して比較した報告

インプラントの対合歯で抜歯に至った歯 2.65%(10/378歯)
インプラントの隣在歯で抜歯に至った歯 3.76%(5/133歯)
義歯の隣接歯で抜歯に至った歯 26.0%(38/133歯)

義歯の鉤歯となりやすい隣接歯の喪失率は明らかに高い。

・森野茂, 他.インプラントが残存歯に与える影響 第2報 遊離端欠損部隣接歯, 対合歯に関する臨床的検討.In : 日本口腔インプラント学会 第23回九州支部学術大会 抄録集, 2006 : 51.

義歯とインプラントでは経過中にいわゆるツケの回りどころが異なります。そのため、一概にインプラント補綴がすべてよいとはいえませんが、対合歯に配慮していくことができれば長期安定を望める可能性は高くなります。

多数歯欠損症例と捉えられている遊離端欠損においては、抑制効果はあるものの、崩壊原因を把握してリスクを考慮し慎重に適用を考えるべきです。さらに、咬合崩壊の進行にともなって残存歯の状態も安定度が低くなりやすく、かつ、インプラント適用に対しては骨量不足に陥りやすくなり、総合的にリスクが高まるために、患者さんと治療ゴールをよく相談して補綴法を選択しなければなりません。

※参考書籍
 『見る目が変わる!「欠損歯列」の読み方、「欠損補綴」の設計』
 編著  本多正明  宮地建夫  伊藤雄策  武田孝之
 クインテッセンス出版株式会社

Q48: 歯周病にかかっている人はインプラント周囲炎になりやすいってホント?

インプラント周囲炎の発症率に関しては、歯周炎のグループが28.6%であったのに比べ、その他のグループでは5.8%と歯周病のグループが有意に高い。(Karoussis 2003)

※参考書籍
 「科学的根拠に基づく歯周病へのアプローチ」
 清水宏康 著 医歯薬出版株式会社

Q49: インプラント体は骨にどれくらいの面積ひっついているの?

最初の1年間までは40%程度と低く、それ以降で70~80%と高くなり、周囲の骨が安定するには負荷後約1年が必要とされると言われています。

※参考文献
 「咬合機能下におけるインプラント界面骨と微小循環」
 日歯周誌 43(1):43~51, 2001

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